幸せがまわる
【君はポップスターより 神谷優心と七尾賢太郎】
賢ちゃん今日めっちゃええ笑顔やなあ、見てたらこっちまで幸せな気分になるわ――常連客に言われた、と賢太郎が電話口で笑う。喫茶店で仕事中の賢太郎を、優心はまだ見たことがない。だが想像はつく。人懐こい笑顔と穏やかな声。図体はでかいくせに、案外繊細。そして真面目。
たぶんいつだっていい笑顔だと思う、だけど今日は特別? なんかええことあったん、と優心が問うと、賢太郎は小さく咳払い。発送連絡、きたから――何の、と聞くまでもない。明日発売のユーシンのソロ写真集の話だ。お互い顔は見えないのに、きっと二人して赤くなっている。
正直恥ずかしい、でも嬉しい。賢太郎に見せられない仕事はしたくない。賢太郎の笑顔は優心の幸せ――そうやって幸せは、まわっていくのだ。
グループメンバーのソロ写真集が出るくらいメジャーになったトイラブ…と思いきや、ファンクラブの限定アイテムあたりがありそうな線かと思っています。ユーシンの本にはエッセイも載っていて読みごたえがある体裁。賢太郎はまだ祖父の元で修行中で、常連客からは賢ちゃんとか兄ちゃんとか二代目とか呼ばれています。