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    魔法使いの初恋(1)4

    ≪魔法使いの初恋(1)3

     金曜日の午後三時前。三限の授業が終わってすぐ、颯太はカフェ・エニシに向かった。ちょうどお茶時だからもしかして混んでいるかも、それなら邪魔になってはいけないから、とにかくお礼だけ言って、コーヒーはテイクアウトにしよう、うん、そうしよう――御木本さんと、もっと普通に話をしてみたい、とは思うものの、何を話せばいいのかは見当もつかない。だからあらかじめ、逃げ道を作っている。

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    魔法使いの初恋(1)2

    ≪魔法使いの初恋(1)1

     隣人は稲葉という一年上の先輩だ。名前の響きから連想してしまうせいか、顔つきがどこかうさぎに似ているな、と颯太はずっと思っている――そういう颯太はこの先輩にイタチかオコジョ、と言われたことがある。見た目と体格、共に小動物寄りなのはお互い様だ。

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    魔法使いの初恋(1)1

    (1)

     午後四時半の商店街は、強い西日を受けて金色に染まっていた。
     夏の終わり、秋のはじめの晴れた夕方、倉坂颯太は眩しさに目を細めながら目的地に向かって足早に歩いている。

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    ひとはそれを幸福と呼ぶ(1)3

    ≪ひとはそれを幸福と呼ぶ(1)2

     今日の不審者の正体は、かつて近所に住んでいた同い年の幼なじみ、瀬戸龍太だった。先週通報があったという人物が、龍太であるはずもない。実家は今も同じ町内だが、本人は家を出て職場の近くに一人暮らしをしている。
    「あーびっくりした。殺気出てたぞ、そのトレー」
    「びっくりしたのはこっちだよ、泥棒かと思った」