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    君はポップスター(7・完結)

    ≪君はポップスター(6)

    (7)

     両手に触れる優心のボアジャケットは暖かいし、人の身体の硬さというのは案外心地良いものだと思う反面、いくら人気のないところとは言えそこそこ明るい夜の公園で、オレら何やってるんやろうな、と思わなくもない。
     ふ、と笑って優心が呟く、
    「賢太郎めっちゃコーヒーの匂いする」
     どうやらしがみついている間にマスクがずれたらしい。ダウンを着こんでいるが、それでもわかるのか。

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    君はポップスター(6)

    ≪君はポップスター(5)

    (6)

     不意に吹いた風が頬を刺す――が、それほど寒いとは思わなかった。興奮しているせいだろう。
     優心はしばらく固まったように俯いていて、やがて小さく息を吐き、
    「ありがとう。なんか、できそうな気、してきた」
     そう言って笑った。
     街灯のあかりだけでは心もとないが、心なしか表情が晴れたような気がする――もしかしたら、賢太郎がそう思いたいだけかもしれないけれど。

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    君はポップスター(5)

    ≪君はポップスター(4)

    (5)

     言い募る優心にどうしても反論したくなって、賢太郎は言った。
    「え」
    「少なくともオレは、テレビで優心見たら元気になるしなあ。頑張ってんの見て応援したなるし。アイドルてそういうのやろ? 優心そのものやん」
     まあ自分の場合は、トイラブのユーシンより前に神谷優心を応援したい気持ちがあるわけだけれど――ふと視線を感じて振り向く。
    「……え、と、その」
     優心が、顎にマスクをひっかけたままでパクパクと口を開いたり閉じたりしている。 

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    君はポップスター(4)

    ≪君はポップスター(3)

    (4)

     名前を呼んで、なあ、と振り返る。
     公園の前を車が行き交い、スマホで何事かを話しながら歩道を通り過ぎる人がいて、公園は街灯だけが明るく、その足元の賢太郎と優心を照らしている。
     優心は、
    「……、」
     帽子の下で目を丸くして、ただ白い息だけを零しながらしばらく固まったように賢太郎を見つめて――それから、ぐい、とキャップのツバを掴んで俯いた。ぽつりと呟く、
    「……何で賢太郎て、いつもそうなんやろなあ……、」

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    君はポップスター(3)

    ≪君はポップスター(2)

    (3)

     賢太郎の卒業後の進路がようやく定まったのは、ほんの数日前のことだ。
     父親は継がなかった祖父の喫茶店を、賢太郎が続ける――せっかく大学まで行ったんやから、一度はどこかの会社に就職して、喫茶店やるのはその後でもええやんか、と両親は言った。学費を払ってもらっている手前、親の意見ももっともだとは思った。けれど、そろそろ歳やしなあ、と引退を匂わす祖父から店のことを教わるなら、回り道をしている暇はない。
     説得を続け、あまりいい顔をしていなかった両親、主に母親が、最近になってようやく折れてくれた。