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    覚えてもいないくせに

    【アホの横山とカシコの中田より 中田周と横山健琉】

     大人になって知った健琉の酒癖――悪いのではない。ただ、気持ちよく酔って適当なことを言い、ストンと寝落ちて翌日は何も覚えていない。
     金曜の夜。今日の健琉も酔って寝落ちた。一方の周は、楽しい気分になりこそすれ記憶をなくすことはない。後片付けを終えて居間に戻る。畳の上で気持ちよさそうに寝息を立てる健琉を見下ろして、周は小さいため息をひとつ。
     本気か、それとも酒の上での冗談か。なあ、オレらも買おっか、指輪とか―人を喜ばせるだけ喜ばせて返事も聞かずに寝てしまい、朝になれば覚えてもいないなんて。自分ばかりドキドキして、こんなの絶対フェアじゃない。だから決めた、朝になったら言ってやる―昨日のアレはプロポーズか?
     お前もちょっとは、ドキドキしろ。

    本編は高校2年生ですがお題SSで一足飛びに大人になりました。就職二年目くらい。本編後二人は無事同じ大学に合格し、就職先はさすがに別々で、同棲はしてないけど健琉が周の家に入り浸っているというざっくり設定です。本編を書き終えたら以降は二次創作みたいなノリで書いてしまう僕の悪い癖。卒業後社会人設定です!