テキスト

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    君はポップスター(1)

    (1)

     ――わたし、メリーさん。今、あなたの近くのパンダ公園にいるの。パンダ公園なのに、パンダがいないの。
     
    「……、メリーさん、この一年帰ってきてないからなあ……」
     スマホを握りしめ思わずつぶやく。メッセージの送り主はもちろんメリーさんではない。
    「じ……マスター、ごめんちょっと出てくる。すんません、失礼します」
     頷く祖父――マスターを尻目にエプロンを着けたままダウンジャケットを羽織り、カウンターの常連客に笑顔で頭を下げ、ドア横の鏡で一瞬髪を整えて――暗めの茶髪は先週カットに行ったばかり。行っといて良かった!――七尾賢太郎(ななお・けんたろう)は店を飛び出した。ちりんちりんと軽やかなドアベルの音が、すっかりクリスマスムードに彩られた夜の商店街に響く。隣の居酒屋は、毎年店の前に派手なイルミネーションを置く。年々パワーアップしている気がする。