テキスト
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君はポップスター(1)
(1)
――わたし、メリーさん。今、あなたの近くのパンダ公園にいるの。パンダ公園なのに、パンダがいないの。
「……、メリーさん、この一年帰ってきてないからなあ……」
スマホを握りしめ思わずつぶやく。メッセージの送り主はもちろんメリーさんではない。
「じ……マスター、ごめんちょっと出てくる。すんません、失礼します」
頷く祖父――マスターを尻目にエプロンを着けたままダウンジャケットを羽織り、カウンターの常連客に笑顔で頭を下げ、ドア横の鏡で一瞬髪を整えて――暗めの茶髪は先週カットに行ったばかり。行っといて良かった!――七尾賢太郎(ななお・けんたろう)は店を飛び出した。ちりんちりんと軽やかなドアベルの音が、すっかりクリスマスムードに彩られた夜の商店街に響く。隣の居酒屋は、毎年店の前に派手なイルミネーションを置く。年々パワーアップしている気がする。 -
アホの横山とカシコの中田3(1)
(1)八月の初め、夕食を作る中田周はいまだに落ち着かない
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アホの横山とカシコの中田2(5・完結)
(5)中田周のいまさらな告白と横山健琉のそれこそいまさらな決意
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アホの横山とカシコの中田2(4)
(4)中田周と受験のプロ、横山健琉の歯止めが効かない妄想
(20200920改稿)
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アホの横山とカシコの中田2(3)
(3)横山健琉と中田周の、普通と特別についての問いと解
(20200920改稿)